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「2012年6月」
2012年6月29日 11:24
板垣ひろかず
この街に住み始めた時 ぼくはまだ高校生で
いっぱしの勉強家面して 歩きながらの読書
時の自治会長から「わが町の二宮尊徳」などとからかわれたものだ
ひそかな夢と野心を胸に
いつかここを出て
何か大きく打って出る雌伏の時を過ごす気分で
何にでも勝利できると思っていた錯誤
いま梅雨を迎え
雑木はくろぐろと勢いを増し
雑草はコンクリートの割れ目からも生え広がる
かつて高校生だったぼくは
押し寄せる
雑木や雑草の圧力に抗しきれず
周囲の自然にある種の恐れさえ抱いてしまう
人間が勢威を振るっていた街は老い
道も家も人の心も
わがもの顔に振舞いだした自然に
呑み込まれていくようだ
カテゴリー: おりおりの
2012年6月17日 21:13
山名 太郎
Mの生活実態は――
白髪あたまは1回1500円
それも2、3か月に1回のカット
その間わがプードルは倍以上の金をかけて
時には月に2度のおしゃれ
これが平和と云うものの
諸相のひとつ
誰が文句をいうものか
守山は麦秋の終わりを迎え
水温む田んぼには稲苗が勢いよく突き出ている
昨日はわざわざ尼崎から
今日ははるばる奈良市から
この田舎サロンへお客が来る
トリミング料金をはるかに超える
交通費と長時間をものともせず
トリマーZの腕に惚れ 意気に感じ
マニア同士の気脈を重ねて・・・
これが ほんのちょっとした幸せ
人生のささやかな豊かさでなくてなんであろう
守山市水保町 樹下神社は水の神
叡山延暦寺建立と同じ時代
水を鎮め 心を鎮め 神仏に祈った人たちの
平安への希求
グルーミングは形を変えたその現代風表現
トリマーZの真の世界
あなたによる平和の具象化
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2012年6月17日 12:43
かつら こゆき
わたしの耳は 聴力を断たれ
無音の世界が眼前に広がる
スタンドにはトイプードル
小さな動きから生ずるだろう音も
発しているに違いない啼き声も
わたしには届かず 風景は揺れる
志しているのは 犬をいつくしみ
犬の美しさかわいさを現出する
腕利きのトリマー
無言のアートに挑みながら
はさみが毛を切る音は聞こえる気がするのです
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