「ど」に寄せる想い・・・心優しく、目の前のあなたに捧げたい。ひとの心にそっとよりそう、ささやかな応援歌。

わたしの中の母

1983年4月10日 20:48

第3号 かつら こゆき

あなたのあたたかみが
ねいきとともにしみこんでくる よる
わたしは人類の母の系譜をかんがえている

あなたとの性器を擦過させるいとなみのあと
わたしの産道を四人のこどもがとおった
ひとりは胎児のままで
三人は嬰児として
それぞれのいたみをきざみこんで
わたしの中の母をそだてながら

壁面に大書されたAVE MARIA
明朝活字のようなつめたさが
フラッシュのむこうから突きさしてくる

あたらしいいのちがもうやってこないはずの
わたしのいま
あくなき母はしかしあなたを孕みはじめている
すでにその胎動が感じられ
あなたのもたらす陣痛さえ予測できる
そして ぎりぎりと門をでてゆく
あなたとわたしの苦悶

あなたを産みおえたとき
わたしの中の母はさらに大きくなって
人類を孕んでいくのだろうか

カテゴリー: 一葉詩誌 ど

シェアする: Feed mixiチェック このエントリーをはてなブックマークに追加
Copyright (C) 2011- do67 All rights reserved.