「ど」に寄せる想い・・・心優しく、目の前のあなたに捧げたい。ひとの心にそっとよりそう、ささやかな応援歌。

さ き こ

1983年6月30日 20:43

第7号   かつら こゆき
子宮にかえろうとした
ちいさな女の子がいたのを
あなたは知っていますか
産道をやっとのことでくぐりぬけ
さあ元気のいいうぶ声――
呑みこんで
きっとして子宮に戻ろうとした女の子
回転軸1形成期から胎児期第3段階へ
その苛酷な逆行を決意させたものは
いったい何だったのか

 ―――――さきこが見たのは闇の色
 地球のはじまりのはるか以前の
 巨大な沈黙
 見てしまって彼女にことばはない
 さきこが聴いたのはアンドロメダ星雲のためいき
 90万光年かなたとのラポール
 感じてしまって彼女は話すことをやめた

とげとげしい脳波をよく見てください
落雷にもひとしい電位差のなかに
人間になることを拒否しようとした
小さくかたくなな意志がよみとれませんか
アクスで消そうとしても
ホルマリン槽に浮かんでいるその人を
ただちに連想できませんか

 のけぞるかあさん
 激しく動いているとうさん
 美しい夜のやさしい心とたくましい体のまじわり
 神秘の液体が動いて流れてとどまって
 さきこのいのちのはじまりが演じられていく
 その一部始終を自分で見た
 記憶が
 彼女に
 ある

しかしさきこ
太陽を西から昇らせるようなことはもうやめよう
あなたの物語はあまりにも哀しいから
さきこは十分かわいいから

カテゴリー: 一葉詩誌 ど

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