静かな瞳をおとして笛をお吹きなさい
女の人よ
長く濡れた黒髪のリズム
あなたを包んだふるえてやまぬ遠いとおい喜びの旋律を
そしてまた月夜の寂しいひとり寝のために
ふたたび みたび よたび
そのつめたいまつげをおとし
両のゆびに紅みがかった力を踊らせ
女の人よ
それがあなたに予定されていた
なんというか このぼくらには解らない運命
ろふろふと
空かける音色がむしょうに哀しい夜ではありませんか
ろふろふと
つつましやかな羞恥を去って
笛は流れ 人は流れ
おそろしく大きな世界が
いまはひっそりと
勝ち誇った男のように
あなたに耳を澄ますのです
ああ 笛をお吹きなさい
女の人よ
ひろいひろい闇にむかって
へしあいへしあう夜にむかって
お吹きなさい笛をこまやかに
人目をへだてたこの夜が
あなたのよろこびであるように
おふきなさいおふきなさい 女の人よ
透明な笛の音の香りが
あなたの乳房にまつわりついて
それがあなたのよろこびであるように
それがあなたのよろこびであるように
ああ おんなのふるさとを流れきたこの音色に
あなたとぼくが抱きあうのだ
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修羅
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初期詩篇