かつら こゆき
わたしは しずかに矢をつがえ
的場に対峙している
的場から押し寄せてくる 日頃のもろもろの雑念と嘲笑
それがわたしへのメッセージだったのか
袖口からしろいひだりうでにぎり出し
的を睨みつけるきっぱりとした貌とこころ
みぎうではしなやかに引き下げられる
遠くでいにしえ人の鬨の声があがった?
それを合図に ひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
わたしの矢は放たれ
低く鋭く反りの浅い放物線を描いて
的 ど真ん中射ぬく
またも聞こえるいにしえ人の喝采の声
ひとしきりどよめいてわたしのたたかいはおわる
弓矢を抱いて野戦に駆り出された
父と母の そのまた父と母の そのまた...
血につながった記憶のくさり
あれはたしかにわたしのたち
いくたびかの戦経て獲得されたほんとうのやさしい眼差し
心地よい声のひびき
あれからどれくらいの時が流れただろう
透きとおるようにしろかった両腕は いま
弓矢置き ベースを弾き
時に 評判のバウムクーヘンを焼いている
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おりおりの