一葉詩集　ど

死はたえず襲いくるので
おれは擬態の北枕あるいは
擬葬の習性を身につける
有史すれすれの巫女の激しい倒錯
きょうそれはほのほだ
発情した白炎のつくる白影
ひっそりと燃えはじめ
火が奔り
やがてなめらかな赤色の海となる
燃えただれてゆく寝棺の中で
小さくなっているおれは
魂の悪臭をかなしみ
肉体の静まりに歯ぎしりしている
天空指した意志と筋肉にかえて
うす墨色の炎が
長六尺の木箱に座り
札びらを数えあげるようにゆらめいている
長い隠蔽の習癖は
乳房ある裸体に衣着ることを強いるが
棺を着たおれは
いま青々とした視線にさらされ
もっとも屈辱的な姿に燃える

　　　　１
一瞬の黙契
視線で抱き合う雌性と雄性
　　　　２
さかさに立ち枯れてゆく胎児
　　　　３
群衆の流れにすりきれてゆくテトロンウールの肩
すりへらしてゆく生アンド性
　　　　４
コンクリート塊の森に沈潜した野獣は
信号灯の呼吸をはかる
　　　　５
車道のむこうでなごやかな衝突が始まり
車窓から世界は激しく歪み
死者のアルバムが加わる
　　　　６
白猫の白腹をよぎった蚤のようなものを
地上三階から狙うライフル
射撃の名手は手にくる弱震に
蚤のようなものの死を認知するか？
　　　　７
髪のもつれを指で梳ききり
隣家の殺人を黙殺したい

めくるめく疾走のさなか
トラックは静寂
ざわめく太陽
無音の弾丸が光りながら
きみのとなりでゆっくり後退する

弾いて伸びる脚
拒絶する耳
心は勇者の姿勢で駆ける

歓声が湧き
それを無視できる
若者らしい不遜が両肩に盛り上がるとき
きみはもっともきみらしく
輝きながらゴールを擦過する
と　音の闇をつんざいて
ひとつの世界がはじける
健聴への長い錯誤を走りおえ
きみは
しあわせやふしあわせを超えた
自己の姿勢を奪いとるのだ

一連の母さんのネガが
きみにはりついているようだけれど
あかるいくちびるに
きみの父さんが住んでいるようだけれど
きのう
ブラジルのコーヒー園をまわり
キューバの匂い
カストロの黒ひげの匂いを
かぎとってきた太陽が
たあいもなくころころと
せりあがってくる朝
きみはやはりきみ自身で
影のように輝いている
花を見れば花
鳥を見れば鳥
夢を見れば夢
仔リスの無垢と仔リスの野生に似て
きみのすべては確実に正しい
たとえそれがきみ自身の妄想に帰ろうとも
ひかりをすくいとるきみの手から
はじめて立つきみの脚から
愛のやさしさをかみしめているきみの心から
おおらかなたたかいの息吹から
いっさいのよあけは今はじまる

あすのいろはうみのいろ
あおくあおくあおく
どこまでもひろがって
やがてあおぞらに
かけあがる

あすのおとはうみのおと
ざんぶざんぶざんぶ
いつまでもうたいつづけ
きみたちのあしおとと
まじりあう

あすのこころはうみのこころ
むかしといまとあすにはしかけ
だれにもそそぐやさしさ
みまもっている
くりかえすいのちのたんじょう

うみ
うみ
きみたちのあすはうみのようだ

１　あおい空　そら　
　　ひびくぼくらの
　　たからかな足音
　　夢をひろげ　ねがいをのせて
　　伊香立の空
　　みどりの風が吹きぬける

２　ひろい空　そら
　　はずむぼくらの
　　かろやかな足音
　　あすをめざし　力をためて
　　真野川の水
　　きらめく光がよびかわす

オーイ　べんきょうだぞ
あつまれあつまれ教室に
きょうもたのしくおべんきょう
なにをするのかな
なにをしようかな
こころいっぱいはりきって　（オ―）
からだいっぱいはりきって　（オ―）
これからべんきょうはじめます
みんないっしょに
エイエイオー！

みんなみんながんばったね
○○○のべんきょうおわります
おもしろかったかな　　（ハイ）
たのしかったかな　　　（ハイ）
かがやくえがおでハイハイハイ
これでべんきょうおわります

きみはクーヘンを焼くまっしろな戦闘服に身を装い
いさましくオーブンに向かっている
やさしくかぼそい腕の白さ
ときにほほえむ歯の白さ
すきとおるよこがお
すべて異次元の輝きだ
菓子工房のかぐや姫

もしもし
ガラスをへだてて
手指で話しあう
わたしたちの得意の手法
工房内

なか

のあつさはどうですか
　　なんとかしのげそうです
きょうの出来はグーですか
　　やわらかくおいしいクーヘンでしょう
なにか手伝いましょうか
　　いいえ時間内にかたづきますから。
うつくしいゆびとてがおどる
白い魔法をかけるように

こんなに聡明な動きをする手とあたまに
ぐずだののろまだのという形容詞は
まったく似合わない
でしょ！？

トリミング室前室に
ムカデだああ〜〜〜！
赤黒い立派なムカデが出現したので
育ちの良いちい先生は
卒倒はしないまでもかなりのパニック
異ムシのたうつ夢にも見てしまいそうな光景
見てしまった
だが
女はそんなにやわでない
いずれ男どもが退治してくれるのは自明の理
それまで　両手を胸にあてささやかなこわがりを演じるの？
頼りになるのは　所長？
副所長？
事務の○○さんも　かなりやりそう
そうそうそう！
だが残念ながらこのたびは最年長に花をもたせた格好で
それまでよ〜〜〜！
塩化何なににまみれた異ムシはいっぺんにダウン
若者に活躍の場を与えなかった配慮不足が
あたらしい国会で問題になるか？
なるまい
なるかも
しょうもな！

わたしは　しずかに矢をつがえ
的場に対峙している
的場から押し寄せてくる　日頃のもろもろの雑念と嘲笑
それがわたしへのメッセージだったのか　

袖口からしろいひだりうでにぎり出し
的を睨みつけるきっぱりとした貌とこころ
みぎうではしなやかに引き下げられる
遠くでいにしえ人の鬨の声があがった？
それを合図に　ひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
わたしの矢は放たれ
低く鋭く反りの浅い放物線を描いて
的　ど真ん中射ぬく
またも聞こえるいにしえ人の喝采の声
ひとしきりどよめいてわたしのたたかいはおわる

弓矢を抱いて野戦に駆り出された
父と母の　そのまた父と母の　そのまた...
血につながった記憶のくさり
あれはたしかにわたしのたち
いくたびかの戦経て獲得されたほんとうのやさしい眼差し
心地よい声のひびき

あれからどれくらいの時が流れただろう

透きとおるようにしろかった両腕は　いま
弓矢置き　ベースを弾き
時に　評判のバウムクーヘンを焼いている

さっちゃん？　　　　う〜〜んちがうな。
さちこちゃん？　　　やっぱりちがうな。
幸子さん？　　　　　まだまだ。
幸子様？　　　　　　ムムムムム。
さちこどん？　　　　それかも？
さちこど〜〜〜〜ん！　　　それ！それ！それ！
―――――というような次第でありまして
わたしたちの友人Sachiko Mは
ど〜〜〜〜んとかまえておりまして
口、口、口、口、出しまくり
思いつきアイデア出しまくり
注文出す数　数知れず
叱咤叱咤！激励激励！
これはああして、あれはこうして
それはそれの気の向くままに
ものすごいラフスケッチの山また山

京と近江を股にかけ（それでもかなり大きな股だ）
英国アメリカ股にかけ（なんちゅうたって聴導犬はイギリスにアメリカよ！）
南アフリカにも脚を伸ばすか？
アフリカで初の開催世界ろうあ者大会に聴導犬を持ち込むため
大きな股で闊歩する
さちこど〜〜〜〜ん！　さちこど〜〜〜〜ん！

手玉に取る人ここかしこ　マリオネットもうん百体
それでもみんなはついていく。
恐いから？　ノー！
面白い明日に出会える予感！

夏のレッグウオーマーやさしくあたたかい
Thank you さちこど〜〜〜〜ん 

わたしのくびれた腰のあたりに
いつからか不思議の国のGeleeくんが住んでいます
いざ仕事へ　自宅を出ようと構えると
妙にざわざわと騒ぎ出すGeleeくん
　　（こんな弱い者いじめの格差社会へ誰が出て行くものか！）
わたしはあわててトイレに駆け込み
15分の出遅れ

電車に乗ってもGeleeくん
どうして機嫌を損ねたか
　　（フン！見られたもんじゃない。某党の代表選）
急に下腹部　気体漲り
いたたた...と叫ぶGeleeくん
途中で電車急いで降りて
駅のトイレにごやっかい

バスに乗ってもGeleeくん
少し揺れても怒りだす
（沖縄辺野古米軍新基地建設許さん！）
なだめるわたしに逆らって
次停車ボタンを無理やり押させ
お借りしますよ　某センターのおトイレ

Geleeくん　不思議の国のGeleeくん
わたしの敵？　わたしの味方？
うつくしい音楽聴くとき　あんなにおとなしいのに
この世の中　腹の立つこと多すぎる
しばらくは仲良く付き合うしかないか
わたしの中のGeleeくん

ふだんはおだやかな　ちー先生が
はさみを持つと　一瞬
まわりの空気がぴーんとはりつく
テーブル上の被造形犬は金縛りにあったように
静かに自らを晒し
日常を超えたいじられ犬になる

いじってぇぇ〜〜
もちろんそんな声は耳に入らぬが
イヌもそんなこと言うはずもないが
ちー先生の踊るはさみで
プードルはプードルになり
ダックスフントはダックスフントになり
アフガンハウンドはアフガンハウンドになる

シザーカットで
すべての形をつくりだす
これぞまさにシザーマジック

時には
教え子たちの心にも
鞭ならぬ愛のはさみを切りこんで
人間のあり様を示したりする

これ！FKNG！
今日は休養したい？　なんや？！　あかんあかん！
予約入れているの分かってるやん！
ひと息つくのは
あんなにいっぱいお世話になった人たちに
恩返ししてからやで〜〜！
浪速女のど根性見せな！

１．６時半には起きなさい　あなた
　　いま奥さんとふかふかベッドね
　　昨夜のなごり　気づかれちゃだめ
　　さあ　出かけなさい　ジョギングに
　　眠いの　わたしのせいにしないで
　　モーニングコール　しようかしら

２．１２時半はオフィスでしょ　あなた
　　その秘書　わたし気になってるの
　　少しは冒険してもいいけど
　　うわさ話も　ちらほらと
　　たのもしいよな　気もするけれど
　　妻ある身でしょ　つつしみなさい

３．８時半にはグラスかたむけ　あなた
　　ふたりは粋な　恋人どうしね
　　酔えば眼もとが　濡れるくせ
　　愛してあげるわ　思いきり
　　ねぇ　すてきなのは　わたしのせいよ
　　きょうは　どこからせめようかしら

１．あなたがおくる　キューワード
　　きょうは視線も　冷ややか色ね
　　心がわり　お酒にわびるように
　　背中見せて　そんなに飲むのね
　　カメラの前で　頬寄せて
　　オンエアしたのに　ふたりのことは
　　マドラーのおと　妙にカラカラと
　　済んだ愛のむなしさ　ひびかせる
　　
※だれもいない　このスタジオに
　　　テレビカメラだけ動いている
　　　わたしひとり　演じていただけね
　　　愛の物語

２．いつかは　こんな日が来ると
　　覚悟はしてたわ　逢ったときから
　　だれがまくの　かたい紙ふぶき
　　女ごころ　冷たく切りさく
　　セットの裏を　見てしまい
　　あなたの素顔も　知ってしまった
　　ライトばかり　やけにあかあかと
　　憎い愛のいつわり　照らしてる
　　
　　※くり返し

りくるうとから未公開株というものをもらい
うそを何回もついて
大蔵大臣やめた人が
総理大臣にならはった

総理大臣いうたら
並みのがき大将やない
ザ　キング　オブ　キングス
ザ　ガキダイショウ　オブ　ガキダイショウズ　や
ぼくなんか足元にもよれへん

けど　ちょっとふしぎやなあ
ぼくらの世界
きたないお金はもらわへん
なかまにいっぺんでもうそついたら
がき大将はクビや
なかなかきびしいんやで

秋風が冷たく吹きわたり
見わたすかぎりの山の渓に
黄色く紅く樹々の踊り
ぼくらは夕陽に染めあげられて
いま「子ども」を生きている
ぼくらの世紀を迎えるために
ぼくはがき大将

きたないお金をもらい
平気でうそつきつづける人が
総理大臣してはる

ふしぎやなあ